介護施設での看取りとは?病院との違いや看護師の対応について解説

高齢化が進み「多死社会」といわれるなかで、自宅や施設で看取りを行うことが増えてきました。

看護師が看取りを行う場所は、大きく分けて以下の3つです。

  • 病院
  • 介護施設
  • 自宅

今回は、介護施設での看取りに焦点を当て、病院との違いや看護師の対応についてくわしく解説します。

介護施設への転職を考えている方や、現在介護施設で働いている方は、ぜひ参考にしてください。

介護施設での看取りの実際

介護施設での看取りは、回復が見込めず、本人や家族が延命治療を望まない場合に行われます。

看取りの時期が近づいてきたら、本人や家族の希望に沿った最期を迎えられるようにケアを行うことが大切です。

点滴や酸素吸入、胸骨圧迫などの延命処置について説明を行い、意思を確認します。わかりやすいパンフレットなどを用意して説明を行っている施設もあるようです。

看取りについての説明を聞いたときは、動揺したり混乱したりする家族もいるため、気持ちが落ち着いてから見直せるパンフレットはおすすめです。

看取り期には、以下の3点のケアを重点的に行います。

  • 清潔の保持
  • 身体的苦痛の緩和
  • 精神的苦痛の緩和

これらのケアは看取りの場がどこであっても行われます。

介護施設では医師や看護師が24時間常駐していない施設も多いです。入所者が穏やかな最期を迎えるためには、施設全体で体制を整えなければなりません。ケアの必要性や方法について多職種で情報を共有し、医師や看護師の不在時にも絶え間なくケアを提供できるような体制づくりを行うことが大切です。

清潔の保持

清潔のケアは不快を除去するだけでなく、最期まで尊厳を保つという意味でも重要です。

居室の環境調整や口腔ケア、清拭などを行い、できる限り快適に過ごせるよう援助を行います。

看取り期の入居者の状態は刻々と変化するため、バイタルサインや呼吸状態、顔色などを観察し、どのような清潔ケアが適しているかを判断することが大切です。

入浴を中止した場合でも、部分浴や清拭などのケアを行い清潔を保ちます。

状態によってケアの方法を変えながら、清潔を保持できるよう援助を行うことが大切です。

身体的苦痛の緩和

看取り期では疼痛や倦怠感、呼吸困難などのさまざまな身体的苦痛が現れます。穏やかな最期を迎えるためには、身体的苦痛の緩和が非常に重要な意味をもちます。

看護師は入居者の状態をアセスメントし、以下のようなケアを実施して身体的苦痛を緩和します。

  • 安楽な体位の調整
  • ベッドサイドの環境調整
  • 食事形態、内容の変更
  • 入浴、清拭、洗髪、足浴、手浴の実施
  • マッサージ
  • 温罨法
  • 傾聴
  • 疼痛コントロール
  • 抗不安薬、睡眠導入剤の使用検討
  • ステロイドの使用検討

痛みは主観的な感覚であるため、疼痛スケールを用いて痛みの強さを数値化し、アセスメントを行うとよいでしょう。

苦痛の原因を見極め、できるだけ早く苦痛の緩和を図ることが大切です。

精神的苦痛の緩和

看取り期の看護において、不安や恐怖などの精神的苦痛を緩和することは非常に重要です。

迫りくる避けられない死を前に、不安や孤独、恐怖、抑うつなどを感じることが多くなります。

亡くなる1~2週間前になると混乱がみられ、錯乱状態になることもあるでしょう。

頻回に訪室して声をかけ、そばに付き添って傾聴するなど、安心して過ごせるようなケアを行うことが大切です。

介護施設では個室になっていることが多いため、一人で過ごすことに不安を感じる方も多いです。

また、家族の精神的苦痛の緩和を図ることも大切です。

病状の説明や情報の共有をこまめに行い、家族の思いや希望を傾聴する機会を設けます。

必要なときに寄り添い、傾聴し、大切な人を失う悲しみを表出できるよう環境を整えましょう。

介護施設と病院の看取りの違い

病院での看取りは医師、看護師だけでなく栄養士、理学療法士、作業療法士などの多職種が協働して行われます。24時間必要なケアや医療処置をすぐに受けられることが特徴です。

しかし、住み慣れた自宅や施設に戻り、できる限り家族と一緒に過ごしたいと願う方も多くいらっしゃいます。

介護施設では、看取り期には面会の制限は行わない施設が多く、家族と過ごす時間を確保できます。

また、介護施設では24時間介護サービスを受けられるため、在宅に比べて家族の負担も少ないでしょう。

しかし、介護施設では医師、看護師が24時間常駐していない施設もあり、状態観察や急変時の対応に時間がかかる場合もあります。

医師や看護師と24時間連絡できる体制は整っていますが、病院のように迅速な対応ができるわけではありません。そのことで不安を感じ、パニックに陥る家族もいます。

看取り期の家族の不安を緩和するために、以下のことに気を付けるとよいでしょう。

  •  普段からコミュニケーションをとり、信頼関係を築く
  •  入居者の状態の変化をこまめに共有する
  •  ケアの根拠を説明する
  •  看取り期における身体的・精神的変化を事前に家族に伝える

少しでも不安を緩和するために、家族の思いを傾聴することも大切です。

本人だけでなく、家族にとっても穏やかな看取りとなるようにケアを行いましょう。

まとめ

今回は施設での看取りの実際と、病院で行う看取りとの違い、看護師の対応について解説しました。

施設では看護師が常駐しているわけではないため、医師やヘルパーなどの他職種と情報共有を行い、必要なケアを提供できるよう調整することが重要になります。

看護師は看取りの場所がどこであっても身体的・精神的苦痛を緩和し、最期までその人らしく生活できるよう援助を行うことが大切です。

入居者と家族が穏やかな最期を迎えられるような看護を提供したいですね。