手術室看護といえば、医療ドラマでよく登場する「メスを渡す人」のイメージですよね。
病院で働いていても、病棟や外来の看護師が手術室の中に入ることは滅多にありません。
筆者は看護学校を卒業してすぐに手術室に配属になりました。
外科、産婦人科、整形外科、脳神経外科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、眼科など様々な手術看護を経験しました。
このような疑問を持っている人もいるのではないでしょうか。
手術室看護師の役割や仕事内容、やりがいや手術室看護師に向いているのはどういう人なのか、元手術室看護師の筆者が解説します。
手術室看護師とは
手術室看護師はとは、周手術期を通して患者さんが安全・安楽に手術を受けられるように看護を行う看護師のことです。
全身麻酔での手術では患者さんは意識がありません。身体を自由に動かせない状態で、全てを医療者に委ねています。
そのため、患者さんの安全を看護師が保証しなければなりません。
手術は長時間に及ぶことも多いため、神経障害が出ないように体位固定を行ったり、褥瘡ができないよう除圧を行ったり、低体温にならないように環境を整えたりと、細やかなケアが必要です。
また、手術室看護師の仕事は手術中だけではありません。
手術前には術前訪問を行い患者の状態を把握し、安全に手術を終えることができるよう看護計画を立案します。
年齢や栄養状態、既往歴などによる手術への影響をアセスメントし、術中に起こりうるリスクを予測したり、術後の合併症が起こらないようにどのような看護が必要であるのかを考えます。
術前訪問では患者さんとコミュニケーションをとり、不安なことがないかを確認したり、手術室の環境や手術の流れについて説明を行います。
このように、手術室看護師の仕事は器械を渡すだけではありません。
手術前から手術後まで、患者さんの安全を守ります。
手術室看護師の役割
手術室看護には大きく分けて器械出し看護と外回り看護があります。
それぞれの役割を解説します。
器械出し看護師
器械出し看護は直接介助ともいわれています。
手術がスムーズに進むよう術者の介助を行います。
手術の進行をみながら次に必要な器材は何なのかを予測し、術者の手が止まることがないように先回りして準備をしておくことが大切です。
術野を観察し術者が何を行っているのかを理解する必要があり、解剖学的な知識も必要です。
必要な器械や資材の準備も器械出し看護師の仕事です。術式や術者によって必要な器材が異なります。
不備があると手術の進行を妨げることになるため、しっかりと準備をしなければいけません。
手術時間が長時間になる程、患者さんの身体にかかる負担は大きくなります。患者さんの安全のためにも手術開始前に必要物品を不足なく揃えておきます。
また、術後感染を起こさないよう器械・資材の取り扱いには注意が必要です。清潔操作を徹底し、術野の汚染を防ぎます。清潔区域・不潔区域の区別の理解が大切です。
手術で使用する資材には一つ数万円するような高価なものもあります。繊細な物も多いため、慌てずにスムーズに、丁寧に物品を扱わなければなりません。
高価な資材は数が限られていたり、その人に合わせてオーダーしている物もありますので、不潔にしたり、破損しないよう注意して扱わなければなりません。
実は筆者は器械出し看護がとても好きでした!
治療の最前線に関われているということにやりがいを感じることができ、器械や資材の取り扱いにはとても神経を使いますが、自分の行動ひとつひとつが患者さんの安全に繋がっているのだと思うと、集中して仕事に取り組むことができました。
手術の後、元気になった患者さんを見ることは大きな喜びでした!
外回り看護師
間接介助ともいわれています。手術がスムーズに進むようサポートする役割です。
患者さんの入室をサポートしたり、麻酔の準備・介助や体位固定、環境整備やモニタリング、記録などを行います。
手術の進行に合わせて必要な物品があれば用意したり、ドラマで見るような術者の額の汗を拭うこともあります!
麻酔導入前の患者さんは不安が強く、泣き出してしまう患者さんもいます。
そんな時に背中をさすったり、思いを傾聴したり、不安に寄り添う精神面のケアも外回り看護師の重要な役割です。
また手術前に患者さんの状態を把握し、手術に対する不安を軽減するために行う術前訪問も外回り看護師の仕事です。
術中から術後にどのようなリスクがあるのかを予測し、どのようなケアを行う必要があるのかを考え看護計画を立案します。
看護計画に沿って外回り看護は行われます。患者さんの年齢や既往歴、栄養状態などによって必要な観察やケアは変わります。そのため、一人ひとりに合った看護計画を立案することが大切です。
手術室看護師に向いている人
筆者が手術室看護を経験してみて、手術室看護師に向いていると感じる人は以下のとおりです。
- 冷静に判断し対応できる人
- 丁寧なケアができる人
- 術式や器材についての勉強がしっかりとできる人
- 体力に自信がある人
冷静に判断し対応できる人
術中は術野をみて進行を読み、迅速に対応できる冷静さが必要です。
時には思わぬ箇所からの出血など、イレギュラーな事態も起こります。
そんな時でも落ち着いて対応できる人は手術室にぴったりです。
最初から冷静に対応できなくても、慣れてくると自信が付いてできるようになります!
丁寧にケアができる人
麻酔下では患者さんの安全は看護師にかかっています。細やかな観察・丁寧なケアを行い患者さんの安全を守るという意識が大切です。
長時間同一体位でいるための褥瘡の予防や、チューブ・カテーテル類の圧迫による皮膚トラブルの予防、神経障害が起こらないような体位固定、低体温予防のための保温など、麻酔下にある患者さんのケアは細やかに、丁寧に行う必要があります。
手術室看護師がケアを怠ると、術後の回復に影響が出ます。
常に患者さんを思って丁寧なケアができる看護師は手術室看護に向いていると思います。
術式や器械についての勉強をしっかりとできる人
手術がスムーズに進行するようには、しっかりと術式を理解しておく必要があります。
複数科の手術に対応しなければならず、術式を覚えるのはとても大変です。
しかし、術式をよく理解し、術野をよく観察し、状況を把握して予測し備えることが患者さんの安全につながります。
術者の手を止めてしまうと、その分手術時間が長くなります。患者さんの身体に負担をかけてしまい、術後の合併症を起こしてしまう可能性もあります。
また、医療は日々進歩しています。最新の医療機器を扱うための勉強会が頻繁にあります。
勉強は大変ですが、日々努力して患者さんの安全に貢献するという意識を持つことが重要です。
体力に自信がある人
手術は長時間立ちっぱなしでいることが多く、身体的な負担も大きいです。
ガウンを着ると不潔にならなように極力じっとしていなければなりません。
長時間同じような姿勢でじっとする…筆者はこれがとても辛かったです。
初めて機械出しを担当した手術で貧血を起こしてしまった経験があります…
体力には自信があったほうが安心です!
まとめ
手術室看護の仕事内容や役割、手術室看護師に向いている人について解説しました。
看護師の仕事をしていても、手術室の看護はなかなか目にすることはないと思います。
手術室看護は精神的・身体的負担も多いですが、その分やりがいも大きいです。